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第56話

早速オフィスの外に出る。朝から日差しが強く、暑い。 広瀬は、昨日、最後に尋ねた駅の近くへと向かった。 飯星は言い訳めいたことを言っていたが、広瀬は単調な作業は平気だ。 それに、こんな風に一人で判断して外を動き回れるのも嬉しい。 その日は、また、一日中、コツコツと外回りを続けた。 その青年を見つけたのは、帰社時間近い夕方だった。 見つけたというのは正確ではない。広瀬の方がその青年に見つけられたのだ。 比較的大きな駅の落とし物センターで、広瀬は、とうとう探していた黒いカバンを見つけることができた。 ビジネスバッグは写真の通りで、擦り傷があった。 持ち上がると思っていたよりも軽い。中には大したものは入っていなさそうだ。慎重にゆすってみたが、中で何かが動く様子もない。 上についたファスナーには、小さな南京錠がかかっていて、鍵がないと開けられないようになっている。 このカバンの中に、何が入っているというのだろうか。 係の人に指定の書式の委任状を渡す。 それから、身分証明書の免許証を渡してコピーをとってもらい、渡された書類にサインをした。 落とし物センターを出るとすぐに飯星に発見したことの報告メールをした。 このまま真っすぐ会社に帰るとして、だいたい1時間くらいかかるだろう。 カバンをしっかり持って、駅の改札に向かって歩いていると、後ろからつけられている気配を感じたのだ。

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