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第57話

夕方の駅の人ごみの中で、ぴったりと同じ速度で自分について歩いてくる。 少し歩く速度を落とすが、同じように相手も落とした。 それで、意思をもってついてきているのだと確信した。 うっかり振り向かないように気を付けながら、広瀬は、改札から引き返した。 一旦、駅から街に出ることにする。 この駅周辺はよく知っている地域だ。 駅の構内は人が多く、つけてくる相手を確かめにくい。 それに、もしも相手との間で何かあったら、関係ない人が危険にさらすのは避けたい。 人通りの少ないところにいく方がいいだろう。 そう判断し、速度を緩めたり、特に急いだりすることなく、広瀬は、駅前の通りを渡り、5分ほど歩く。 そこはここ数年進められた駅前再開発から逃れた地域だ。 道は狭く、入り組んでおり、チェーン店やコンビニ、地元の居酒屋が並び、奥へ行くとバーやクラブ、ホテル街になっていく。 人通りはほどんどない。 尾行者は、疑っていないのか、後からちゃんとついてきている。 広瀬が、さらに街の奥へと進んだところで、後ろの人物が速度を速め追いかけてきた。 広瀬はさらに人気のない暗い地域に向かって急ぐ。 すぐに、背後に迫り手がかけられそうになる。 そこで、広瀬は、横にとびのき、振り返った。 身体のバランスを崩した相手の足を払うと、地面にころばせた。それから、背中に腕を引き、ねじあげる。 相手は、思った通りの若い男だった。

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