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第67話

ビルの中は薄暗く冷房も当然かかっていない。 外と同じように、いやもっと暑い。 一歩入ると空気がこもっていて、汗がどっとでる。 指定されたのは二階だった。 広瀬に促され、井上が先に進んだ。 二階は、蛍光灯が2か所ほどついていた。 それもすぐに切れそうにチカチカしている。他は切れてしまったのだろう。奥の方は真っ暗で何も見えない。 そこには、三人の男がすでにいた。 そのうちの一人は、後ろ手に縛られていた。井上と同じようにペラペラのシャツにズボンだ。 井上きみおだろう。床に膝とついている。 もう二人は会社員風のスーツ姿だった。この暑いのにネクタイをしている。年齢は30代後半くらい。 二人とも背が高く大柄で、髪は短く、浅黒い。腕や胸の筋肉が盛り上がっているのがワイシャツ越しにもわかる。 依頼主のあの感じの悪かった男はいない。 同じ会社の人間だろうか。 依頼主の男はいかにもサラリーマンといった風情だったが、この男たちは、違法な暴力の匂いがする。 「そいつは?」と男の一人が井上の後ろでカバンを持つ広瀬のことを聞いてくる。「なんで、連れがいるんだ?」 井上は回答に詰まる。

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