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第77話

二人は、広瀬に目を向ける。広瀬が何か言うと思っているのだ。 ここで広瀬が蹴られた話をしたら、自分たちはどうなるのだろう、と心配するのは当然だ。 しばらく沈黙が流れる。もちろん広瀬が何かを言うつもりはない。 早乙女は特にそれ以上は追求しなかった。 そして、階段の上に落ちているカバンを拾ってくるよう手下の若い男に命じた。 うやうやしく差し出されたカバンを手にとり、早乙女は表面が切られているのを見る。 「なんだ、これは」と早乙女は言った。「中を見るのに開けたのか?」カバンを振って見せる。 「もともと切られて開いてたんだ」と血まみれの男が答えた。 広瀬と同じような説明をした。早乙女は信じていない。 「もともとねえ」と彼は言った。「で、中に入ってたものはどこだ?」 また、沈黙が流れる。 早乙女は切れた穴に手を入れ中を探っていたが、なにも見つけられない。彼は、手下の若い男に軽くうなずいてみせた。 若い男は無言で、押さえつけられて抵抗できない血まみれの男の顔を容赦なく殴りつけた。 何度も繰り返す。嫌な音がビルに響く。 この暴行を止めなければと思った。 「中身は、白い封筒です」と広瀬は言った。「その男が持っているか、どこかに落ちているはずです。さっきまでありましたから」

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