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第78話
若い男に手を止めるよう早乙女は命じた。
それから封筒を探すように言った。
白い封筒は階段の上の方に落ちていた。乱闘中に落ちたのだろう。
早乙女は、封筒を手に取ると裏表をじっと観察し、それから、丁寧に封をあけた。
中からは黒いUSBメモリとメモ紙が一枚がでてくる。
早乙女は掌にのせそれもしげしげと見た。
そして、封筒に戻し、上着の内ポケットに入れた。
カバンを手にしたまま、「連れて行くぞ」と彼は言った。「広瀬さんもご同行願おうか」
広瀬は返事をしなかった。
逃げ出して会社に戻りたいところではあるが、こうなっては無理だろう。
相手が大勢すぎる。
ふと、今何時だろうかと思った。
かなり遅い時間のような気もする。
東城のことを思い出す。彼に連絡できない。
あんまり遅いと、彼から連絡をしてくるだろう。連絡がとれなければ、探しに来る。
勢田のところの人間たちといると彼が知る前に帰れるだろうか。
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