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第88話
「彰也、お前が突然行方不明になって、わたしは、お前を探すのに、かなり骨を折った。おまけに、お前の情人がお前をみつけるられるよう手がかりを探しさえもしたんだ」と勢田は言った。「お前が、戻ってからも安全に暮らせるように、心を砕いた。お前の情人も、お前が今後危険な目に合わないように気を付けると思ったんだがな。どうやらわたしの東城への評価が間違っていたようだ」
勢田が何を言っているのか広瀬にはよくわからなかった。
特に前半のところ。
勢田はいつもわけのわからない話をするので、いちいち気にはしていられないのだが。
よくわからないながらも、後半の話にはカチンときた。
東城は今の会社で仕事するのに猛反対していたのだ。
自分が彼の指図は受けず、働いてるんだ。東城のことを批判されるいわれはないはずだ。
別に、勢田に東城についての弁護をする必要はないんだけど。
それに、東城と勢田が同じような意見で、広瀬の新しい仕事に反対するというのも腹が立つ。
「タイセクトーン」と勢田はまた言った。「警視庁を辞めさせられたと思ったら、また、こんな会社で働くことを選ぶとはな。この仕事のために、加次井と乱闘になったのか?」
広瀬は答えなかった。
彼は、今度はあの感じの悪かった顧客の名刺を手に取る。
「トールエイジン株式会社か」勢田が教えてくれた。「このトールエイジンは、加次井の親戚筋の団体のフロント企業だ。そこに依頼されたのか?だとしたら、なぜ、加次井の連中と争っていた?」
そうだったのか。
フロント企業ということは暴力団関係だ。そんな会社とタイセクトーンは取引をしているのか。
巧妙に素性を隠していてわからなかったのか、それともわかっていて付き合っているのか、どちらだろうか。
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