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第103話

「その東城さんからもらった孔雀石のペンダントが、なにか怪しいんだね」 忍沼のほうはといえば、勝手に腑に落ちたようだ。 「前から言ってるけど、東城さんは碌なタイプじゃないよ。あきちゃんを監視して束縛してるんだ。自分から半径5キロ以上離れたら通報するとか、他人が10センチ以上近づいたら警告だすとか平気でしそうだ。あきちゃんも、彼からのプレゼントが変だって思ってるってことは、やっと僕の言うことが分かってくれたんだね。そのペンダント、僕に送って。どんな細工してるのか、調べてあげるよ。証拠をつきつけてやる」忍沼は早口でそうまくしたてた。 孔雀石は忍沼が作ったのではなさそうだ。 もし、忍沼が作っててこんなこと言うのなら、二重人格かかなりの名優だろう。 そのどちらでもない、と思いたい。 広瀬は、孔雀石は調べてもらわなくてもいい、と忍沼に伝えた。 忍沼は不満そうだったが、なんとか電話を切った。 今度会ったときにも、しつこく言われるだろう。こんな不確かなこと聞かなければよかった。 忍沼じゃないとすると、東城は、どうやったのだろう。それとも、この孔雀石のペンダントは普通の石で、東城は本気で魔よけのつもりで贈ってきただけなのだろうか。 広瀬はソファーの背もたれに身体をあずけた。 ここ数日おこったことを頭の中で整理しようとした。かなり混乱しているのだ。いろいろなことが起こりすぎている。 新しい会社、落とし物のビジネスバッグ、USBメモリ、勢田、家の周辺で示威的な動きをしていたオジサンたちの一人大垣の勤め先の車。 それに、この孔雀石。 どこから手を付けていいのか、わからない。

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