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第117話

「あきちゃん。僕たちはまだ復讐を果たしていない」と忍沼は言った。 「僕たち」と広瀬は繰り返した。 「そうだよ。僕、融、ほかにも何人か生き残りがいる。僕たちはつながっていて、ずっと実験の関係者を探してきたんだ」と忍沼は言った。グループを作っているというのは以前も聞いたことはある。 「見つけたら、どうするんですか?」 「責任を取らせる」と忍沼は言った。それから広瀬に言い聞かせるように付け加える。「今までもね、取らせてきたんだよ」 「それは、どういうことですか?」と広瀬は言った。 「責任を取らせるっていうのがどういうことかって聞いてるの?」と忍沼は言う。 「そうです。それから、危害を加えるつもりでしたら、やめてください。大垣さんは、俺も詳しくはわからないんですけど、力を持っている人です。警察庁内にも、その関係者にも、まだ、大きな影響力があります。」 「心配してくれてるんだね」と忍沼は言った。「あきちゃんが僕のことをそんなに心配してくれるのはうれしいけど、大丈夫だよ」忍沼は両方の手のひらを開いて見せる。「大垣が権力を行使しているのはこのリアルな世界だ。僕たちは、ここでは戦わない。でも、自分たちに有利な場がある。そこで仕返しをするつもりだ」 忍沼が得意としているネットの中の話をしているのだろう。 何か言わなければ、と思い、広瀬は口を開いた。だが、こちらに向かって歩いてくる数人のグループがいたため、口を閉じた。 忍沼もグループに気づいてベンチを立ち上がった。物柔らかな表情だったが、目は真剣だった。止めることはできないだろう。 「あきちゃん、僕は君を守るといっていつも失敗してる。だけど、今度は先手を打つよ。大垣が君に危害を加える前に、こちらから仕掛ける」と彼はグループには聞こえないよう、小さい声で言った。 それから、彼は声を大きくする。「もっと見ていく?むこうに狆穴子の水槽があるよ。あきちゃん、狆穴子って知ってる?見たことある?面白いんだよ。ずっと見ちゃうんだ」そう言って彼は水族館の左手を指さした。

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