123 / 130
第123話
「ところで田代警部補は、どこの部署に異動になったんですか?」と東城は聞いた。
「最近できた部署だ。環境系の犯罪を取り締まる」
「環境系の犯罪とはなんですか?」
「そんなことも知らないのか、と言いたいところだが、俺もよく知らない。環境には国の予算がたっぷりついているから、警視庁もおこぼれにあずかりたいってとこじゃないのか。仕事の内容はどうせ後付けだろう。環境ビジネスがらみの詐欺とか偽造とか」
「その部署に異動した田代警部補が、ノートを取りに来たんですか」
「おおかた新しい上司に命令でもされたんだ。田代は裏切り者だ」福岡は楽しそうに言った。
裏切り者がどうなるか、お前、知ってるだろう」
東城は首を横に振った。「知りませんし、あまり聞きたくもないです。田代警部補だって、悪意はなかったと思いますよ。仕方なく、新しい部署に言われてノートをもって行ったんだと思います。福岡さんを裏切るつもりはない。尊敬する元上司なんですから」
「お前、本気で言ってるのか?」
「いえ」とそこは正直に否定した。
悪意は絶対にあっただろう。福岡の部下で彼に悪意を抱かない人間はいない。
福岡は東城の否定の返事にも機嫌を崩さず、ただ笑っていた。
ともだちにシェアしよう!