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「・・・・・・・・・・・・」 その次の日、目が覚めて窓を開けた圭一の視線に飛び込んできた光景は、全てが真っ白に染まった白銀の景色だった。 サーッと冷たい風がゆっくりと部屋の中へ入ろうとしている。 それさえも気にならないといった様子で眼下に視線を向ける圭一の表情が、宝物を見つけた子供のように明るくなった。 「・・ホントだ・・ホントに降った。積もった!」 いつもと空気が違い、澄んでいて濁りの無い風が微かに入ってきていることに気がついた彼が外の景色を見ようと窓枠に近づいた時、ふと白い雪が目に留まった。 思うよりも先にガラリと窓を開けて飛び込んできた雪景色。 朝日を浴びてキラキラと輝くその光景は、圭一が今まで見たことも無い程に美しいものだったのだ。 「・・・・綺麗だなぁ・・・」 「ううん・・?・・・うん?積もってるでしょ?・・・というか・・今は閉めて・・ちょ・・寒い」 いつの間に起きたのだろう。 窓際に置いているベッドの上で、さらした肌をそのままに枕に顔を埋める咲里の髪が見える。雪ばかり見ていて彼の事を一瞬考えていなかった圭一は、ゆっくりと開けていた窓を閉めた。 「ああ。悪い」 圭一がベッドの側に腰を下ろすと、その重みを感じたのか、モゾモゾと揺れていた咲里の動きがピタリと止まる。 「起きるか?要」 「んんぅ・・まだ・・眠い・・」 「そうか」 「ねえ」 「ん?」 「起きるの?」 咲里のくぐもった、けれど何処か寂しさを含む声が小さくて。 その声と隠れた表情に、圭一の表情が優しくなる。 「・・起きないよ・・」 「・・・・・・・」 「隣、入れてくれ。もう少し寝るから」 「・・・ん・・」 さっきまで入っていた布団に舞い戻る。 ホカホカと温かい布団と人肌を感じながら、圭一は不意に視線を天井に向けた。 「なんだろうなあ」 「・・・?」 「やっぱり、あったかいなぁって」 「うん」 よくよく考えてみれば、寝ていたようであまり寝ていないかもしれない。 雪はすぐには解けないだろう。そんなことを考えながら、彼はまた眠ることにしたのである。 「・・・・・・・・・・」 すうすうと規則正しい寝息を立てる圭一の隣で、ふうと吐く息が聞こえる。 「・・・・・・雪か」 確か、朝からそんなことを言っていた気がする。微妙にしか覚えていないけれど。 「また、この季節が来たんだ・・」 そんな事を不意に呟きながら、咲里はムックリと起き上がると隣で眠る圭一に視線を向けた。 「・・・・・・・・・」 圭一は、優しい。どんな話も聞いてくれるし、よほどの事が無ければ怒ったりしない。 他の人が聞いたら笑いそうな話でも、真面目な顔で耳を傾けてくれる。 ―それが、どんなに嬉しく、ありがたいと思ったか。 ありのままの『自分』を、自分自身でさえも受け入れがたかった。 その存在を認めてくれる嬉しさ。ありがたさ。気恥ずかしさ。 その全てを、何を言うでもなく受け入れてくれて、当たり前であるかのように隣にいさせてくれる。 ―その瞬間を感じるだけで、どれだけ僕が救われていたのか。 好きになって、不安で、ぐちゃぐちゃになって。 縋りついて、でも結局捨てられて。 そんな中で、君に出会った。 自分とは正反対の君を見て、呼吸が止まった。

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