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第29話

 ギリ、と首を絞める音が聞こえる。徐々に意識も薄くなり抵抗する力もなくなっていく。  「...ぁ...かはっ、ぅ、げほっ..けほっ...く、」  「ダメだよ和史、こいつは俺の犬なんだから勝手に殺しちゃ」  「...恵」  視界も霞み、生を手放しかけた時急に手が首から離れ、大量の酸素が器官を通って肺へと入っていく。  床に手をつき、激しく咳き込みながらも頭の中にあるのは今しがた聞こえたあいつの声。  俺を犬と言い、自分とは同等に扱おうとしない横暴な奴。  「いいか愛都、お前は駄犬なんだ。だから躾をし直してやるよ。...いや、半分は罰かな」  叶江は俺の前から香月を退かし、正面でしゃがむと俺の顎を掴み上へ向かせてきた。  「お前が悪いんだよ。大人しく俺の言うことを聞いておけばよかったのに。」  「...な、にを言って...」  「ちゃんと近くで見ててやるよ。せいぜい可愛く鳴いて可愛がってもらえよ」  ニヒルに笑い、それだけ言うと叶江は俺から離れて隅にあるソファに腰を下ろした。  そして代わりに3人が俺の周りを囲む。  あぁ、俺はリンチされるのか。しかも相手は宵人をイジメていたという憎いやつら。  叶江が奴らとどう知り合ったのかは分からない。つながりも見当たらない。  しかしあえてこの三人を用意したということは、叶江自身きっと宵人のいじめについて知っていたからに違いない。  仮とはいえ宵人の恋人であったのにあいつは何もしなかった。宵人のいじめも見ないふり。  宵人を守ることが出来る立場にいながらも、手を差し伸べるどころか無視さえする。  わかっていた、叶江はこんな奴だって...最低な、奴だって。  それでも俺の心の中につもる怒りは止まることを知らない。  「それじゃあ楽しもうかぁ、もう俺たちも宵人君には清々してるからさ~。愛都君でストレス発散、いや性欲発散させてよー」  「そうそう。僕たちが愛都君を傷つければきっと宵人君もこれに懲りて弥生には近づかなくなるだろうし」  「ふざけ――んんっ、」  「要はあれだ、お前は黙って俺たちに犯されればいいんだよ。」

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