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第38話

 俺が叶江にここへ連れて来られて何日が経ったのだろうか。  テレビも時計もない部屋にいるせいで時間の感覚が麻痺してしまっていた。  唯一わかることといえば窓の明かりによって知ることができる、昼と夜の違いだけだ。  叶江は日が昇って少ししたらここを出ていき、空が赤く染まるころに帰ってくる。  きっとあいつはいつも通り学校に通っているのだろう。...俺のことをここに監禁したまま。  日常生活は酷いものだった。 食事の管理はもちろん排泄などの管理までされ、夜になれば毎日叶江に飽きるまで抱きつくされる。  もうプライドも何もかも踏みつぶされ、俺に残っているのは宵人を想う気持ちだけだった。  一日一日過ごす毎に溢れ、募っていく宵人への愛情。  それは兄弟としての家族愛なのか、恋愛的感情なのかは分からない。  しかし、宵人がひどく恋しいということに変わりはない。  宵人宵人宵人...っ、会いたい、会いたいよ...  ベットに横になり自分の身体を抱きしめる。 俺が抵抗したことによって振るわれた暴力による殴打の痕と、濃くつけられた無数のキスマーク。  汚れて汚らわしくなった俺の身体。  それでもきっと宵人は俺を抱きしめてくれるはずだ。あの柔らかい微笑みを浮かべて。  「ただいま」  耳元で囁かれる聞き慣れた声。さらさらとした茶髪が顔にあたり、唇が塞がれる。  酷く濁った瞳に映る叶江の顔。いつの間に帰ってきたのだろうか、全く気がつかなかった。  「愛都...ここから出てもいいよ」  俺の身体の上に跨り、肩口に顔を埋め痕をつけながら叶江はそう言った。  途端俺の瞳から濁りが消え、明かりが戻ってくる。  「帰れる...のか...?」  「あぁ、帰してあげる」  唇にキスをし、口角を上げ叶江は笑う。 宵人に会える。漸く...漸くだ、愛しい宵人に。  胸が歓喜し、心の重荷が取れ軽くなる。    だからだろうか、目の前に与えられた心浮かせる話に気をとられ俺は気がつかなかった。  「もう終わりを向かえるからね」そうニヒルに笑いながら呟いた叶江の言葉に。

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