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第39話
叶江の専用の使用人が運転する車で、叶江と共に俺の家へと向かう。
久々に見る外の景色だが、俺はそれに目もくれず宵人のことばかりを考えていた。
宵人は無事か?俺がいない間どうしてたんだ。ずっとずっと泣いていたのか?
俺が帰ってくるのを待ってくれている?ずっと...ずっとずっとずっと。
家に着くまでの間その考えが止むことはなかった。
―
――
―――
「着いたぞ」
やけに長く感じた道のり。あふれ出す宵人を思う気持ち。
車が家の前に止まるなり俺は扉を開け外へ飛び出る――が、
「薄情だな。寝食を共にした俺には何もなしかよ」
「離、せっ」
宵人...宵人宵人宵人...っ。早く早く宵人に...。
叶江に腕を掴まれ歩みを阻まれる。離してほしくて、腕を振るが中々外れない。
「はぁ。ま、いい。きっとお前は...」
しかし、ため息を吐くと叶江は俺の腕を離した。そして俺は振り返ることなく玄関へと向かう。
「お前はまた俺の元へやってくるから」
玄関の取っ手に手をかざしたとき、後ろでそう言った叶江の声が耳に入ってきた。
だが、そんなことを気にすることもなく、俺は取っ手をとり家の中にへと入っていった。
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