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第40話
扉に鍵が掛かっていなかったことに一瞬疑問を持つが、それも深くは考えず宵人を探し出そうと気をそちらへと戻す。
――ガタッ、
「...何の音だ。宵人、か?」
靴を脱ぎ、一歩踏み出したとき上の階から何かが倒れる音が聞こえてきた。
すぐさま俺は音のしたであろう場所へと向かう。
「宵人っ!どこにいるんだ!!」
二階に上がるが、そこは物音一つせず、廊下は静まり返っていた。
「宵人...宵人!部屋にいるのか?なぁ、」
しかし、ここの階のどこかに宵人はいるはずだ。必ず...。
足早に宵人の部屋の前へ行き、ノックをして名前を呼ぶが返事は来ない。
「宵人、いないのか...?」
ガチャリと宵人の部屋の扉をゆっくりと開ける。
部屋の中へと一歩踏み出し、顔を上げた俺は一瞬その体勢のまま固まった。
「よい...と、」
肉を絞める縄の微かな音。その縄に首を絞められ吊るされている――俺の大切な義弟である宵人。
薄く開けた虚ろな瞳に、口元から伝う唾液。
あまりの衝撃の強さにすぐさま体を動かすことができなかった。
「あ゛あぁ...っ、ぅ..ぁ、よい...と、」
痙攣しているように小刻みに震える宵人の体。
...生きている。まだ宵人は生きている。
だが、体が動かない...。動けよ!動けよ動けよ動けよ!!
「、ま...なと...っ」
重なり合う視線。そして宵人の口から俺の名前が出た瞬間、俺は宵人を助けようと動き出した。
机の棚にあったカッターを掴み、近くに転がっていた椅子を宵人の前に置く。
その上に立ち、宵人の体を抱きこむと首を絞める縄をすぐにカッターで切った。
どさりと俺の体にもたれ、体重を乗せてくる宵人。
「宵人...宵人、大丈夫か...?」
だがその呼びかけに宵人は答えてくれない。
椅子から降り、ベットの上に宵人を寝かせる。まさか、と思い宵人の口元に頬を近づける。
――呼吸をしていない
「そん...な、嘘だ...嘘だ嘘だ嘘だあぁっ!」
ピクリとも動かない宵人の体。
俺の叫ぶ声と共に悲痛の涙が瞳から溢れ出した。
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