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第42話

 白い清潔感漂う室内に、独特な消毒液のにおい。 そんな室内にあるベットに眠る、宵人。  奇跡的に宵人は命を繋ぎとめることができた。  あの後すぐに自分の部屋に行き、スクールバックに入っていた携帯を使って救急車を呼んだ。  救急車が来るまでの間、うろ覚えながらにやった人工呼吸と心臓マッサージが宵人の生存率を上げたらしかった。  だから初めは喜んだ。涙を流して床に崩れ去りながら...  だけどその数秒後、医師から聞かされた言葉によって俺は目の前が真っ暗になった。  “宵人君は生きている。しかし再び目覚めることはゼロに等しい”  ゼロというわけではないが、殆どないに等しい確率。  担当の医師はそう言っていたが、そのほかにも医師によってはそんな宵人のことを脳死判定する人もいるということも言われた。  嘘だ...信じない信じない信じない信じない。 宵人はもう俺に微笑んでくれないのか?もう、俺を抱き締めてはくれないのか?  「宵人...」  寝ている宵人の手をそっと握る。その手は暖かかった。  以前と変わらない宵人のぬくもり。  俺にやさしく触れてくれたこの手。  けれどそれは動かない...俺には触れてこない。  「宵人...宵人、宵人...っ」  消えた笑顔。包み込んでくれる優しさ、俺を呼ぶ声。  もうお前は俺を見てはくれないのか?  傷ついた顔や体。そして命を繋ぐための人工呼吸器。  「許さない...」  俺から宵人を奪ったやつらを。宵人をこんな状況まで追い込んだやつらを...そして自分自身も、  俺にもっと宵人を守るための力があったならば。もっと早く対処していたならば...。  あいつらを許さない。しかし、宵人を守ることができなかった俺自身もまた、憎らしかった。  宵人は何も悪くなかったんだ。  報われない宵人の想い。  『愛都』  どこからか聞こえた宵人の声。  「...宵人っ。俺が...お前の想い、晴らしてやるよ。お前が味わった苦しみをあいつらにも味合わせてやる」  お前のために俺は何だってやってやる。  お前を守ることができなかった俺が、今のお前にしてやれることなら何でも...。  お前を苦しめたやつらを全員地獄に叩き落としてやる。  だから...全てが終わったらまた、その瞳に俺を写してくれ。  そして俺は一瞬人工呼吸器を宵人からはずし  その唇に誓いのキスをした。

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