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第66話※綾西視点

 「はい。これでいいんだよな」  「うん、そう。ありがとう~」  恵の部屋の玄関にて俺はある物を恵から買っていた。  恵から今しがたもらった小瓶を顔の前で軽く振り眺める。  中に入った液体...それは媚薬だった。  「それ、愛都に使うんでしょ?」  「え?なんで~?教えなーい」  「...じゃあ、それ返して。愛都以外の奴に使うんならやっぱり売らない」  そういうなり、恵は俺の手から小瓶を奪おうと手を伸ばしてきた。  俺はすぐにその手から逃げるようにして、背中に隠す。  「えー、それは困るっ、これ即効性で効き目が強いんでしょ?それに恵が売るものだからパチモンでもないだろうし...」  ――あまり、こういうのは計画が狂ったら嫌だから言いたくないんだけどな...まぁ、しょうがないか。  「わかったわかった。恵には特別に教えるよ。使うのは...千麻だよぉ、恵の言う通り。もう、ぜーったい秘密にしてねぇ。他の人に言っちゃダメだよ」  そう、俺が言えば恵は目を細め、不気味に笑った。 思わず俺はそれに対して口をひくつかせる。  千麻の考えていることは大まかにだったら分かる。 ...俺、そして和史達に復讐する。そのことだけを考えて全て行動しているんだ。  だけどこいつ...恵 叶江は何を考えているのかが全然わからない。  千麻を自分の犬だといって可愛がっているのかと思えば、俺や香月達に強姦させたり、今のように千麻に使わせるためだけに媚薬を売ったりして...。    恵は千麻に執着しているのではないのか? でも、今までの仕打ちを考えると...分からない。  「はぁ...じゃあ、俺は帰るねぇ。ばいばい恵」  答えのない問いを続けてもしょうがない。 俺は考えるのをやめ、今はただ素直にこの状況に従っていくことにした。  「愛都にそれ、バレないかな」  「...?」  恵に背を向け部屋を出た瞬間、恵はそう言葉を投げかけてきた。  しかし、不思議に思い振り向いたときにはすでに扉は閉まっており、中からガチャリと鍵を掛ける音がしただけだった。  ――何を今さら...。恵自身、これを千麻に使うのだろうとわかって売ったくせに。  そう思いはするが...恵のその一言で俺は一気に自分の中の不安が膨れあがるのを感じた。

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