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第69話※

 ――と、思っていたのに  ―  ――  ―――  「本当...バカだな、お前は」  急に肩に置いていた手を掴まれ、俺が事態を把握するよりも早く引き寄せられる。  頭が回らないまま勢いを抑えることもできずにソファの上に倒れた。  「な、なんでお前...」  いつの間にか形成は逆転し、俺は弱り切っていたはずの千麻に跨られていた。展開についていけず、言葉が詰まってしまう。  「ぜ、全部...演技だったの、かよ」  「あー、半々かな。あのコーヒーになんか入ってるのは知ってたけど、お前を騙すために飲んだから一応俺の身体普通の状態ではないし」  「それだったら、ほとんどの量を飲んだんだろ?カップの中にはもう...」  そう、カップの中身はもうほとんど残ってなどいなかったのだ。あの量を飲んでいれば演技なんかする余裕なんてないはず。  「素直にあの量を飲むわけないだろ。そこの窓から外に捨てたよ。もしかしたら誰か運悪くその下を歩いてて頭からぶっかかったかもな」  千麻はクックと笑い、光の無い死んだ目のまま服の下に手を入れてきた。  「な、何すん...っ」  「はっ、綾西、お前もうずっと素が出てる。素は隠してるんだろ?取り繕わなくていいのか」  「うるせぇ!バカにしやがって、」  抗おうと千麻の胸を強く押すが、体勢が不利なせいで上手く抗うことができない。  それにしても...こいつには媚薬がちゃんと効いていないのか?そう思いはするも、千麻の赤く染まった頬や主張しているそこを見る限り、別段効いていないというわけでもなかった。  「ふっ...んんっ、な...っ」  急に鼻をつままれそのまま唇を重ねられた。驚きで開いた口内に何かの液体が千麻から流れてきて俺は息苦しい中それを飲み込んでしまった。  「今のって...」  「お前が俺に出してくれたコーヒーの残り。...媚薬入りのな」  千麻の手にあるのは先程までテーブルの上にあったはずのコーヒーカップ。その言葉を聞くなり固まる俺を無視して千麻はスウェットと下着を一気に脱がしてきた。  ひんやりとした空気が下半身を覆い、俺の顔は羞恥心で赤くなった。

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