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第77話
「そういえば久々の媚薬の効き目はどうだった?すごく気持ちよかったでしょ?」
「てめぇ...」
「頃合いだと思って泰地の部屋に行ったらなぜか和史がいてビックリしたよ?まさか泰地じゃなく和史にヤられてるとは思わなかったし、お前は半裸で気絶してるし」
あははは、と乾いた笑い声を耳元でされ、俺は目を細め唇を強く噛んだ。
悔しいことだが事実なだけに反論することができなかった。きっと今回のことも叶江が絡んでいるに違いない。
「俺が行った時の和史の顔、すごく面白かったんだよ?こう、人間臭さがない獣って感じ。薄暗い中でギラギラ目だけが光っててさ。俺が止めなかったらきっとそのまま気絶したお前を犯し続けただろうな。」
「...もうあんなヘマはしない。タダで体を売るなんてこと2度とするか。」
「えー、そう。俺的にはいい暇つぶしになったと思うんだけどな。たまには壊れない程度にまた遊んでみたら?」
愛都の髪をいじりながら、そう軽口を言う叶江とこれ以上会話しても無駄だと思い、そこから愛都は口を閉じた。
「なぁ、愛都」
「....」
「なぁって、はぁー、無視?おーい、愛都くーん。返事くらいしてよ。じゃないと俺がぶつぶつ独り言を言ってるってことになっちゃうじゃん。おーい、」
「るせぇな、黙って寝てろっつったのはお前だろ。...疲れたんだ。放っておいてくれ」
薄暗い部屋の中、しばらく目を瞑っていれば段々と睡魔が襲ってきて、今では言われるまでもなく早く眠ってしまいたい気持ちが大きい。
大嫌いな叶江の体温を感じながらでもいい、抱きしめられている状態でもいい。
今はただ眠りに就きたい。瞼は重く、開ける気さえしない。
「ねぇ、愛都。永遠の愛って存在すると思う?」
「...永遠の...愛、?」
「そう。愛都にとって永遠の愛に必要なものは何だと思う?」
「...そんなの、知るか」
そう答えたのを最後に、俺の意識は深い闇の中へと沈んでいった。
「俺はさ、憎しみだと思うんだ。憎しみほど、相手を強く思う感情はないからね」
だから眠る俺の頬にキスをし、そう呟いた叶江のことなど俺は知る由もなかった。
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