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第85話

 「ごちそうさまでした。愛都君、すっごくおいしかったよ!」  「おそまつさまです。気に入ってくれたなら俺もすごく嬉しい」  空になった皿を見て、俺は何となく満足する。食べるのが誰であれ、やはり自分が作った料理をおいしそうにたいらげてもらうのは嬉しいものだ。  ...まぁ、目の前にいるのが宵人だったらもっと...比べ物にならないほど幸せなんだろうけど。  「僕も食器洗うの手伝うよ!」  「本当?ありがとう、助かるよ」  食器を洗おうと立ち上がれば、すぐに沙原も立ち上がり手伝いを申し出てくれた。  そしてニコニコと嬉しそうに笑う沙原と流しに並び何やら変な雰囲気の中、食器洗いを始める。  自分よりも低い位置にある沙原の表情をチラリと窺うが、洗っている間もずっと笑顔だった。  ―思ったよりも早く、沙原は俺に好意を寄せるようになった。しかしこいつの好意は作りものの俺へのもの。バカだな、こいつも。...だがそのおかげで事は順調に進んでいるのも事実だ。  綾西ももう少し...もう少しで堕とすことができる。  そしてその最後...重要な役割を果たすのは沙原、お前だ。

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