86 / 140

第86話

 「そういえばさ、綾西君授業休みがちだよね...大丈夫かな」  「あぁ、そうだね。前まではこんな休むようなことはなかったんだけど...」  「ちゃんとご飯食べてるかどうかも心配だな。あっ、後で何か持っていってみよう。でも今部屋にいるかな...沙原君、どう思う?」  「...どうして泰地のことばっかり話すの?そんなに愛都君は泰地と仲がいいんだ。」  急に皿を洗う手を止め、不機嫌そうな声を出す沙原。表情は先程と打って変わって沈んだものだった。  ―分かりやすい反応。俺が来るまでは綾西とずっといたくせに、きっと今はその綾西に対して軽い嫉妬心を抱いているに違いない。  目的を果たすために沙原に好意を寄せられるよう行動してきた結果がこれだが...それにしても沙原に対しては少し上手くいきすぎな気がする。  あれだけ香月達に好かれてよくしてもらっていても靡かなかった沙原がこうもすぐに俺を好きになるものだろうか。  今更ながらにそんな疑問が浮かぶ。  「うーん、でも俺...綾西君に嫌われてるっぽくてさ。なんかしたかな。」  愛都も皿を洗う手を止め、語尾を弱めてそう言えば沙原は体に寄り添い、ゆっくりと顔を上げてきた。  少し、沙原が背伸びをすればキスできてしまうというほど近くに沙原の顔がある。  「大丈夫だよ、愛都君。僕がいるから元気出して」  「...沙原君、ありがとう」  ふわりと微笑み、濡れた手でそっと沙原の手を掴む。その瞬間沙原の顔は赤くなり、照れたように下を向いた。

ともだちにシェアしよう!