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第87話※綾西視点

 「何なんだよ...なんなんだよ!!クソっ、」  ガン、と壁を殴り、怒りを紛らわそうとするが怒りは収まることもなく無意味な行為となってしまう。  制服の袖から出た手首にはいくつもの打撲痕があった。...この痕は体中、全体に散らばっている。  あいつらも考えがあってやっているのか顔には1つも傷が無かった。  ―なんで俺がこんな目に合ってるんだ。あんな知らない...見ず知らずの奴らなんかにっ、  千麻に屈辱的な仕打ちを受けてから数日。  あれから俺は顔見知りでさえない男子生徒から会えばいつも暴力を振るわれ、 姿の見えない犯人によって部屋以外の場所...教室などにあった私物は全て上靴などもボロボロにされ俺のロッカーに入れられる、という酷い状況に陥っていた。  「これじゃあ、まるで...」  ―千麻 宵人と同じ状況じゃないか。  そう思った瞬間、体から力が抜け俺は壁伝いにズルズルと床にしゃがみ込んだ。  「や...よい...弥生...っ、」  嫌、だ...嫌だ嫌だ嫌だ...。あいつと同じだなんて、そんなの...っ、  「会いたい。会いたいよ...弥生、」  傷だらけの手で顔を包み込み、瞼を閉じればすぐに弥生で頭の中はいっぱいになった。  愛しい弥生。大切な...俺の、唯一の存在。お前しかいない。俺はお前しかいらない。弥生しか、俺にはいないんだ...っ、  今まで弥生中心で香月達以外に話す生徒なんて誰もいなかった。  こんな状況に陥った今、心の支えは弥生だけだった。香月達なんかには言ったって、弱みを握られるだけ。...あいつらは弥生がいるからこそできた俺の“トモダチ”だから。  ―なぁ、体中が痛いんだ。こんな痛いのは初めて。辛い...辛いよ。  今はすぐにでも弥生に会いたかった。弥生の姿を見て落ち着きたかった。

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