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第88話※
あれから教室まで行くが、そこには弥生の姿どころかそのクラス全員そして俺のクラスの全員の姿も見えなかった。
「合同体育、か...」
しかし、そういえば、と次の授業を思い出し俺は自分のロッカーの中を一瞥するが、当のジャージは使い物にならないほどボロボロにされていた。
しかたがなく、体育は見学という形で授業を受ける事にしてすぐに体育館へと向かった。
―
――
―――
「...っ、なんであいつが弥生の隣に...」
体育館に着き弥生の姿を確認してすぐ、俺はその隣にいる千麻に目がいった。
―俺の...俺の弥生に...っ、
キッと憎しみを込めて千麻を睨む。
俺をこんなんにしたのはきっと千麻の仕業だ。あの平凡...千麻宵人のことで俺に...
いじめてたのは俺だけじゃないのに...晴紀や和史だって...
「...っ!」
「綾西君!おはよう」
近づくこともできずに睨んでいれば、不意に千麻がこちらを向き微笑んできた。そして弥生を置いて俺の方へと駆け寄ってくる。
その瞬間、俺はあの日の千麻との出来事を思い出し、じわり...と脂汗を掻く。
―こっちに...来るな...っ、
しかし、駆けだすよりも早く千麻は逃げられないように俺の手を掴んできた。
「最近会わなかったからさ...心配したんだよ?...すごくね」
そして今度は歪んだ笑みを作り、千麻は俺の耳元でそう呟いた。
ぞくり、と背筋は凍り、緊張感が高まって心臓の音はバクバクと五月蠅く鳴り響く。
千麻への恐怖心に対してもろに体は反応し、そんな自分自身に苛立ちを感じるが、どうすることもできなかった。
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