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第94話※綾西視点
「...またかよ」
朝、学校に登校して靴箱を開けるとそこにはいつものごとく生ごみなどが多く投げ捨てられていて、中には何も置けない状態になっていた。
―やっぱ、靴持って帰るようにして正解だったな。
いじめに合うようになって、一度靴をボロボロにされてからというもの俺は毎日靴を持ち運ぶようになった。
案の定俺の靴箱はきれいにしても次の日には必ず汚されてしまっていた。
「...はぁ、」
さすがにもう辛かった。1人で行動するようになって...いじめに合うようになって...そして体中に傷ができるほど毎日暴力を振るわれるようになって。
―弥生にも...嫌われちゃった、っぽいし。いや、でもまだ拒絶はされていないか。
それだけが唯一の助けだった。だからもしかしたら...弥生なら助けてくれるかもしれない。
俺の今の状況を知れば弥生だって...――同情して、また俺のことを見てくれるかもしれないんだ。
同情でも何でもいいから...ただ俺は弥生の笑顔が見たい。
「...何だ、あの人だかり」
靴を履き替え、少し歩くと玄関の掲示板に多くの生徒が集まっているのが見えた。
なんとなく悪い予感がした綾西は早足でそこへ近づいていく。
「...っ!」
そして近づくにつれ、見えた光景に目を奪われ一瞬息が止まった。
掲示板にはたくさんの写真が貼られていた。
その写真には全て顔は写っていない。写っているのは後ろの穴にデイルドを突っ込まれている男の体....――そう、千麻に屈辱を与えられた日の、俺の姿だった。
一気にあの日のことを思い出し、心臓がバクバクとうるさくなり始めた。
冷や汗が頬をつたう。握った手の平には汗が掻いてあった。
―あいつの仕業だ。千麻しか、いない。
一歩、また一歩と足を踏み出し少しずつ人だかりから離れていく。
焦点が定まらず、いつものように前を向いて歩くことができない。
「ぅあ...っ、」
そうやって歩き続けていると急に強く腕を掴まれ、引き寄せられた。
かと思っているとその勢いのまま床に投げ捨てられ、強く全身を床に打ちつける。
何なんだ、と思った頃には扉の閉まる音がして、四方八方から笑い声が向けられる。
顔を上げれば5~6人の男子生徒が視界に入り、俺は嫌な汗を掻いた。
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