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第96話※

 男たちもまさか俺が反撃してくるとは思ってもいなかったのだろう、予想よりも簡単に逃げ出すことができた。  しかし廊下を走ってすぐ、後ろから激しい罵倒と多くの足音が綾西を追いかけてきた。  これで捕まったら完全に終わりだ。あいつらに輪姦される。  一歩踏み出すたびに、痛みが全身を駆け巡り体が悲鳴を上げた。 だけど必死に走り続けた。あいつらから逃げ切るために。  「はぁ...はぁ、はっ、」  そしてある程度の距離を保って、曲がり角を曲がった瞬間、俺は階段のすぐ手前にある用具室に急いで隠れた。  心臓は五月蠅いぐらいに動いて、息は乱れ呼吸がままならない。恐怖からか体はみじめにガタガタと震えていた。  「...チっ、階段か。おい、お前らは上に行け。俺らは下探すから」  「じゃあ見つけ次第連絡な。」  隠れて数秒後にはバタバタと足音がして、その後話し声がすると再び足音が聞こえ1分もしないうちにあたりは静まり返った。  「...行った、か...?」  ドアに耳を当て、奴らの気配がなくなったことを確認して俺は廊下に出ようと立ち上がった。  ―タン...タン...タン...  だが、誰かの足音が聞こえ俺は動きを止める。 ひどくゆっくりとした歩調のそれは徐々にこちらへと近づいてきた。  ―仕方ない。一応この歩いている奴がいってから出よう。  多分、違うだろうがもしもの時のことを考え、俺は用心することにした。  ―タン...タン...タン...タン。  「...?」  しかし、その足音は綾西がいる用具室の前で止まった。  何故...何故ここで止まったんだ。しかもそれから扉を開けることもなくあたりには再び静寂が訪れた。  ―この扉越しに誰かがいる。  俺はできる限り息をひそめた。入ってこない、ということは別段用具室に用事があってきた奴ではないのだろう。それにさっきの奴らだって怪しいと思ったらすぐに中に入ってくるはずだ。  一体誰がいるんだ。何を思ってそんなところに立っている。  そんなことを考えるが、答えが出ることはなかった。  

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