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第100話

 あれから3日...3日経った。――綾西が完全に沙原に見捨てられて。  もちろん綾西はずっと部屋に引き籠っていて、出てこようとはしなかった。  だけどそのことについて、誰も心配も何もしていない。綾西は本当に1人だった。  あとは俺自身の目でその完成体を確認するだけだ。  それで―――綾西は終わりだ。  ―  ――  ―――  「愛都から俺の部屋に来るなんて、珍しいな。ほら中に入ってゆっくり話をしようよ」  そうして来たのは叶江の部屋。  叶江は玄関から中に入ろうとしない俺の手を掴み、中へ引き入れようとするが、俺はその手を振り払い舌打ちをする。  「無駄話はいいからさっさとあれを渡せ。お前のことだから、どうせ俺が何をもらいにここまで来たのかわかるんだろ?」  「はぁ...本当可愛げないなぁ。...これだろ?お前が欲しいのは、」  すると叶江はズボンの後ろポケットからスペアキーを出し、俺に見せてきた。  ―本当、準備がいい。おかしな程に。  愛都はそのスペアキーを見て、もらおうと手を伸ばす...が、  「おい、叶江」  「甘いなぁ。タダでこれは渡せない」  叶江はスペアキーを俺の前から遠ざけ、再び後ろポケットにしまった。  それに対し、愛都は思わず舌打ちをする。  「おねだりの仕方...ちゃんと覚えてる?愛都」  そういい、妖艶な笑みを浮かべる叶江。  「...はっ、くだらねぇ」  再び愛都は舌打ちをすると、叶江の肩に手を置き...――甘さも何も感じさせない、キスをした。  僅かな屈辱感を感じ、わざと粗末に唇を押しつけるだけのものにした。  「...っ、これでいいだろ。早く渡せ、」  「んー、なんかちょっと...いや、結構俺が教えたのとは違うけどなぁ...頼みかたも全然可愛げないし。まぁ、いいよ。今の愛都がちゃんとキスしただけ、まだマシだろうし」  「余計なこと言ってないで早くしろ」  スッと叶江の前に手を差し出せば、今度はきちんとその上にスペアキーを置かれる。  それを確認するとさっさとこの部屋から出てしまおうと叶江に背を向けた。  「泰地、あいつは面白いよ。精神面は弱いけど...その分、依存した相手にはとことん嵌っていくね」  「...何がいいたい」  「ははっ、いいや別に。ただ、このことを愛都は覚えてるのかなって確かめただけだ」  おかしそうに笑い、目を細める叶江。その言葉に何か意味があるのか、と一瞬考えるが、内容的には周知の事実だったため深く考えることをやめた。  何も引っかかる点など思いつきもしないのだから。  「さっそく行くんでしょ?ほら、楽しんできなよ」  叶江はドアを開けると動かない俺の肩をポンと押し、外へ出す。  振り返って叶江の方を見るが、やはり叶江はただただ笑っているだけだった。

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