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第101話
暗い部屋。荒れたリビング。
綾西の部屋の中は前に一度来た時と違って、酷く荒んでいた。
散々暴れたのだろう、床の上にはガラスの破片やバラバラに裂かれた紙。倒れた家具が散乱しており、満足に歩けたものじゃなかった。
きっと1人と言う孤独に耐え切れなくなった衝動で暴れたに違いない。
聞いたところによると綾西に同室者はいないようだった。
―綾西は...個室のほうか、
物音1つしない部屋の中、見てないのはそこだけだ。
愛都は湧き上がる高揚感を抑えることができないまま、ゆっくりと綾西がいるであろう場所へと向かう。
―ガチャ...
そして部屋の前に着き、扉を開ければ隅でうずくまる1つの影を見つけた。
そっと近づくが、特に反応はせず綾西はうずくまって座るだけ。
やはり部屋の中は薄暗かったが、リビングのようには荒れていなかった。
聞こえるのは愛都の僅かな息遣いだけ。綾西はピクリとも動かず、物音も出さない。
―ガッ...っ、
そんな綾西の肩に片足を乗せ、そのまま上半身を壁に押し付けた。
そこで漸く綾西はゆっくりと顔を上げ、愛都のほうを向いてきた。
俺だけを見て俺だけを憎んだ男の成れの果て...生気の感じられないその瞳に愛都は僅かな興奮を覚えた。ゾクゾクとして気持ちが高ぶる。
「...今のお前は最高だ。多くの人間の前で被っていたあんな仮面の姿よりもよっぽど興味をそそられる」
そう、綾西の耳元で囁き、満足した愛都は足を肩から離し、部屋を出ようと背中を向けた。
―あの調子なら、もうすぐあいつも退学し、ここから去っていくだろう。
上手くいけば人間不信に陥って社会に復帰することすら難しくなるかもしれない。
綾西の未来を考え、自分の口角が徐々に上がっていくのがわかった。
死人同然の綾西。だが、打って変わって愛都の胸のうちの霞は減り、幸福感さえ感じる。
―Prrrr...
そんな時、突然の着信音で愛都は踏み出そうとした足の力を抜いた。
そして出ようとポケットの中に手を突っ込んだ瞬間...
「...ぐっ!...ぁ...」
何か硬い物で頭を殴られ、その衝撃のまま愛都は床に膝をついた。
それを狙ってたのか、その瞬間背中を押され、うつ伏せで押し倒される。
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