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第121話※
たいして会話に参加をしなかったために早くに食事を終え、一息つく。
千麻はゆっくりと一口一口食べていたために今、漸くデザートに手を出したところだった。
綺麗に着飾られたケーキをフォークで一口分掬い、口元へと運ぶ。
そして薄い桃色の唇を小さく開けたさいに見えた、赤い舌。――― それがひどく卑猥に見え、ゾクリとした。
あの口腔を嗚咽が出るほどに犯してやりたいという欲望が頭の中を蝕んでいく。
次に視界に入ったのは、服で包み隠された見慣れた肢体だった。
程よく筋肉がつき、しなやかに伸びるそこには華奢という言葉は不適であり、見ていて飽きない美しさがあった。その体を無理に組み敷く快感は計り知れないほどだ。
「...ッ!」
周りには見えないよう、ツー...と太股を触り腰を撫でつければ、千麻は体を硬直させチラリ、とこちらに目を向けた。
『急に止めてくれよ。ビックリするじゃないか』
こそこそと、そう呟いてくる千麻にほくそ笑む。弥生が晴紀の話に夢中になってるのをいいことに、俺は手を伸ばして千麻の内腿、そしてきわどい所へと手を滑らせる。
そうすれば千麻は頬を赤く染め、息を詰まらせた。淫乱な体をしているくせに反応はウブで笑いそうになった。
止めるようにして、俺の手の上にのせてくるその手を逆に握り指を絡めてやる。
すると意外にも千麻は同じように指を絡めてきた。
それによってある確信を得た俺は千麻にだけ聞こえるよう耳元に近づき...
「 夜10時にロビーに来い 」
そう囁いた。そうすれば予想通り千麻は嬉しそうな顔をして小さくうなずいた。
その顔を見て満足した俺は、先程から嫉妬の目を向けてくる綾西に優越感から生じた笑みを返す。
俺の笑みを視界に入れた綾西は当然のことながら目を見開きそして悔しそうに眉間に深い皺をつくった。
千麻は確かに綾西を傍においた。しかし実際、千麻は俺の言動に喜び、何をされるか分かっていてもなお言うことを聞こうとする。それはまるで、俺に好意を抱いているかのように。
俺と綾西は違う。接し方も態度も全て。千麻はこんな風に綾西に笑いかけないし、こんな風に頬を赤く染めない。
― そう、俺は千麻にとって特別な存在なんだ。
俺が求めなくても千麻は俺のことを求めているんだ。
細まる目。上がる口角。
今の俺は中々に最高の気分だった。
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