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45,待てない ※

(そんなの……いいんですか?)  キスを受け入れながら、上に跨がっている彼の腰を抱き寄せる。俺の体から舐め取ったであろう潮の味と、少し苦い体液の味。口の中で粘膜をこすり合わせる快感に、味覚が背徳感というエッセンスを加えていた。  俺はそんなキスを味わいながら、羽田さんの引き締まった臀部(でんぶ)へと手のひらをずらした。 (ここにっ、早く入りたい)  意思表示するように尻を揉む。硬くて張りのある手触りが癖になりそうだ。 「あせんなって」  羽田さんがキスをほどき、(かす)れた声でたしなめた。その声の甘い響きに、腰がまたドクンと反応する。ここで持っていかれたらカッコ悪い。  俺は両腕を後ろに突き、上がってしまった息を整えた。 「いい子だ、そうしてろ」  羽田さんがゆっくりと、俺の上に腰を沈めてくる。自分の先端が彼の脚の付け根にぶつかる感触。同時に手のひらに竿の根元をつかまれる。 「あっ……は――……」  先端をグリグリとこすられる。また溢れ出た俺の先走りを利用して、彼は己の入り口をこじ開けた。  そこに、俺はまっすぐに呑み込まれる。 「――っ……ううっ! 羽田さんっ……」 「いつ、き……!」  眉間に深いしわを刻む、その表情に見惚れた。普段の男らしい彼の中に、こんな色っぽい部分があるとは誰も想像できないだろう。  星明かりを反射して、震えるまつげがきれいだった。 (あー、もう、我慢できない!)  さっきまでただ射精したかったのに、この人をぐちゃぐちゃにしたいという欲望が腹の底からわき起こる。 「――っ、羽田さん!」  筋肉に覆われた腰を強引に引き寄せ、下から思い切り突き上げた。 「あ、は……いつきっ、元気だなあ、おい」  苦しげに笑うその表情にゾクゾクした。一度動き始めた腰は止まらない。肉がぶつかり、粘膜がこすれ合う。その感触に、すぐに意識が飛びそうになった。  羽田さんはそんな俺の表情を窺いながら、ちゃんと間合いを計って動いてくれている。ぶつけるだけの俺とは違った。 (本当に、この人は!)  額から汗が垂れてくる。揺れる星空を仰いだ。  もう、本当に限界だ。俺は顎を引き、奥歯を噛みしめる。  羽田さんが腰を浮かし、一気に俺を呑み込んだ。深い快感の瞬間――頭の中の景色が真っ白になって弾け飛ぶ。 「――っ!」  ドクドクと溢れ出す感覚。羽田さんが強い力で、俺の上半身を抱きしめた。  お互いにひどく息が荒い。乱れた息は、なかなか落ち着きそうになかった。  当たり前だ。溺れてそのあと長距離を泳いで。それでこんなことをしているんだから、体力の限界だ。  しかも羽田さんに至っては、ついさっきまで本気で死にかけていた。 「俺よりむしろ、元気なのはあなたですよ……」  苦しい呼吸の合間に言い返す。それでも興奮が冷めやらない。  羽田さんが紅潮した顔でニヤリと笑った。 「お前のために、何カ月禁欲してたと思ってるんだ。それが晴れてこういうことになって、張り切らない方がおかしい」 「は……?」 「は、じゃねーだろ! お前言ったよな? 俺が誰かと寝るのは嫌だって」  まだ上にいる羽田さんに、ほっぺたをむにっとつかまれた。 (言った、確かに言った……)  あれはまだ冬の頃だ。性的なことに嫌悪感を持っていた俺は、羽田さんにそんなことを言って……。彼はそんな俺のわがままを聞き入れ、今まで守っていてくれたらしい。 「マジで……」 「俺、結構健気だろ?」  勝ち誇ったように言いながらも、彼の表情は照れくさそうだった。 「そんなことされたら、普通に好きになっちゃうじゃないですか!」 「もっと好きになれよ! 俺はもう、お前が好きで仕方ない」  言いながら胸を押され、砂の上に背中から転がされる。 「そういうわけで、2回戦いきますか!」 「2回戦って……」  中に埋めていた俺の一部が抜けて、彼の内腿を白濁が伝っていった。 「悪いな一月、気づいてないかもしれないけど……」  羽田さんが俺の片ひざを担ぎ上げた。 「俺はまだイってないから」 (そうだった、俺だけ先に……)  戸惑ううちに両ひざを頭の上まで持ち上げられ、股の間を星明かりに(さら)される。 「嫌ですこれっ、恥ずかしい!」  羞恥に全身の血が逆流する。 「一月は娼婦にでも強姦魔にでもなれるんだろ?」 「……っ、意地悪ですねえ! わっ!」  俺の両足首を左手にまとめあげ、羽田さんは右手の人差し指で後孔に触れてきた。 「……あっ、あぁっ」 「可愛い声。まだ指も入れてないのに」 「でも触ってます!」  唾液で湿らせた指で、穴の周りをくるくると撫でられる。 「あ~……っ、んんっ!」  思わせぶりな指の動きに、そこがむず(がゆ)くなってしまった。 「お前、感じやすいよな。案外こっちの方が才能あるんじゃないのか?」  指を入れられるのかと思ったら、代わりに舌を差し入れられる。 「あんっ、羽田さん……これやだっ!」  入り口を舌に押され、こじ開けられる感覚に(おび)えた。 「そんな可愛い声出されても……」  羽田さんが脚の間から顔を上げた。 「だって、これは無理……」 「……なら、また今度にしとく?」 「今度……?」  ホッとしながら聞き返すと、羽田さんは俺の両足を開放して首をひねる。 「ああ、たぶんネクストのクランクアップ後だな。無事に帰れればの話だけど」 (クランクアップ後……)  ぼんやりした頭でも、それまでの半年間を思うと気が遠くなった。  記者に見張られている今、プライベートで羽田さんに会うのは難しいし、マネージャーの目があって現場でもほとんど話せない。  その隙を突いて愛を交わそうなんて、さすがに難しいことは俺にも想像がついた。 「それは嫌だ……」 「え……?」 「半年も待てません!」  四つん這いになって、唾液で濡らした自分の指を後ろへ滑らせる。ここで逃げたら後悔する、その一心だった。  自分でいじるのも怖かったけれど、昂ぶる気持ちのまま指をそこに埋めてみた。第一関節、第二関節……それからゆっくりと掻き回す。 「お前今、無理だって……」 「本当に無理かどうか、確認してるんです! 待っててください!」  ピシャリと言うと、羽田さんは勢いに圧倒されたのか口を閉じた。  ただ焼け付くような熱い視線を、じっとこちらに注いでいる。  指の動きに合わせて、クチュクチュとあられもない水音が響いた。 「……大丈夫だ、いける」  なんとか確信を持てたところで、羽田さんの顔を見上げる。 (あ……)  ひざ立ちになって俺を見ていた彼が、すぐに後ろから覆い被さってきた。

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