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第8話
健の第一声は、温かだった。
「大丈夫? 今、どこにいる? ちゃんと、アパートに帰った?」
気が緩んで、つい涙声になりそうだ。
「大丈夫です。今から、寝るところです」
嘘をついた。
江頭さんに犯された上に、道端で吐いて、今知らない公園にいる、なんて葉月さんに言えやしない。
「それにしては、何か外に居るっぽいんだけど?」
「う」
草木のざわめく音や、虫の鳴く声、遠く聞こえる救急車のサイレンなど、外は意外と騒がしかった。
しかし、電話越しにそこまで解るものなのか。
健は、やたら耳がいいようだった。
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