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第14話
帰ろうとする健を、吉乃は思わず引き留めていた。
「あの、葉月さん泊まっていきませんか? もう遅いし」
傍にいて欲しいんです、と素直に言葉にしてしまっていた。
江頭に襲われた恐怖。
それが再び頭をもたげていたのだ。
「いいよ」
明かりを消し、健がベッドの隣に潜り込んできた。
「安心して、お休み」
「はい」
健は、こちらを向いて寝てくれている。
吉乃は最後の願いを訴えた。
「手を、握ってもいいですか」
「いいよ」
健の方から、手を取ってくれた。
そこでようやく、吉乃は安心して眠りに就いた。
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