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第17話
その夜は、円い月が出ていた。
江頭に犯された帰り、ふと立ち止まり吉乃は月を眺めた。
赤い月だ。
どこか禍々しい光を放っている。
「赤い血を片目に差して、赤い月を見なさい……か」
今は亡き曽祖父が、まだ幼い吉乃に繰り返し聞かせていた言葉だ。
『本当に困った時は、赤い血を片目に差して、赤い月をその眼で見なさい』
『ひいじいちゃん、そしたらどうなるの?』
『吉乃を助けてくれる者が、やってくるよ』
無意識のうちに、吉乃はリュックからペンケースを取り出した。
ペンケースから、カッターナイフを手に取った。
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