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第20話

「父さんも母さんも、子どもみたいにはしゃぎながら初売りに出掛けたよ」  ダウンを脱ぎながら、伸彦はそう言った。  エアコンを入れ、リビングから持ってきたみかんを満に渡す。  伸彦だって、はしゃいでるくせに。  でも、それもお終いだ。  僕は、最後の大勝負にでるんだから。 「伸彦。旅客機のパイロットには、ならないの?」 「また、その話か」  みかんをぽんぽんと掌で遊ばせながら、伸彦はだるそうに喋る。 「大勢の人命背負って飛ぶのって、改めて考えると怖いよな。その点、自家用機なら自分一人だから、気が楽だよ」 「解ったよ。だったら僕、今から重大な秘密を伸彦に打ち明ける」 「な、なんだよ。改まって」  正座をし、真面目な眼差しの満に、伸彦は気圧された。

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