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第26話

 言葉に詰まったような、伸彦の表情。  耳が赤く染まっており、握った手のひらが汗ばんでいる。 「内藤 伸彦は、ここにいる青鹿 満のことを……」 「俺! 好きなんだ、満を! 高校に入ってから、どんどん想いが膨らんで来て、それでッ!」  唖然とした満を見て、三ツ矢はニィッと笑った。 「そういうことだな。だったら内藤、旅客機の機長になれ。それが青鹿の求める道だ」  それには、首を振る伸彦だ。 「断る!」 「伸彦、何で!?」  すがるような満を一目見た後、伸彦は三ツ矢を睨んだ。 「取引をしましょう、先生」 「取引?」  人間風情が、光の国の住人相手に、しかも運命遂行人に対して取引とは。  おもしろい、と三ツ矢は指を組んだ。 「聞くだけ聞こう。言ってみろ、内藤」 「満を、このまま俺の傍に置いてくれ。そしたら、俺は旅客機のパイロットに必ずなって見せる!」  うむ、とゆっくり眼を閉じる三ツ矢の仕草を、伸彦と満は見守った。  

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