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若の告白2
「さてと」
この廊下を真っ直ぐ歩き。その後右に曲がって、またまっすぐ歩けば、そこに若の部屋がある。
「いつも思うが、ほんとここだけは静かだな……」
その部屋だけは、滅多に人が寄り付かない特別な場所だ。
若が中学生になった頃だったか。「大事な用がない限り、僕の部屋には近づくな」と組の人間全員に命令し。それ以来、誰もこの場所には寄り付かなくなった。部屋に近寄る奴と言ったら、せいぜい世話係の俺くらいだろう。
「はぁ~~……緊張する」
部屋の前まで来て、一度深呼吸をする。
少しでも若の機嫌が直っていればいいのだが……。
「失礼します若。少々お伝えしたいことがありまして…………!??」
その時。
目の前に映る光景を目の当たりにしてしまった俺は、一瞬息をのみ込んだ。
「あき、とらっ……」
ベットの上に座っていた若は、大きく立ち上がった自分のモノを、両手で擦りながら俺の名前を呼んでいた。
「うっ……あぁっ!」
若の細くて綺麗な指の隙間からは、ついさっき吐き出された白濁が溢れ出ている。
いつもの凛と美しいお顔も、今ではすっかり快楽と刺激に溺れ。呼吸も表情も淫らに歪んでいた。
若ももう高校生。自分の部屋で自慰行為をしていたっておかしくはない。
俺も同じ男だから、溜まったら時々やるし。別にこういう現場を目撃したのは初めての事じゃない。西國や、他の組の奴等のを偶然見てしまったことくらいある。男ばかりの家に住んでいればしょうがない事だ。
だから、他人の自慰行為を見たところでなんとも思わない……はずなのだ。
それなのに。
「っ……」
どうして俺は、こんなにも動揺しているんだ。
どうしてこんなにも、ドキドキしちまってるんだ。
どうしてーーまともに若の顔が見れないんだ。
「秋虎。見たんだね」
「す、すみません!!また日を改めますんで!!」
「駄目。今すぐ部屋に入って」
「えっ!?い、いや、しかし」
「いいから」
若は隣に置いていたテッシュを取って、手慣れたように自分の液を綺麗に拭き取ると。まるで自分の横に座れと言うように、手でぽんぽんっとベットを叩いてきた。
これ以上拒めば、今度こそ本当に若に嫌われてしまうと思った俺は、仕方なく若の部屋へと上がり。なるべく若の顔を見ないように隣へ腰を下ろした。
「えっと……ですね」
気まずい。
というより怖い。
「す、すいません若。その……さっき見たことはなるべく早く忘れますんで……その、許してもらえないでしょうか?」
「駄目」
「っ……そ、れは」
「ずっと許すつもりないからさ。忘れないでよ」
「え?」
一瞬聞き間違えかと思って、若の方へ顔を向けた瞬間。
俺の目の前に、若の綺麗な顔があった。
「わ、若?その、ちょっと近すぎるんじゃ……」
「じゃないと、キス出来ないじゃん」
「えっ、キスってーーっ!?」
続きを口にする前に、熱い吐息が溶け合うように重なった。
「抵抗しちゃ、駄目」
柔らかな唇が、俺の唇を愛撫ように優しくつまんで、触れ合う感触を楽しむように絡まってくる。
「ふっ、ぅ」
あまりにも予想だにしていない展開に、頭は真っ白になっていた。
一体全体どうして俺は、若にキスなんてされているんだ?
というか。若には惚れた奴がいて、しかもそいつは同じ高校の南雲とかいう奴だったはず……。
じゃあ、俺にキスする理由はなんだ?
さっきの自慰行為を見てしまったから?それとも俺がウザいからか?それともただの一次的な性欲処理?
考えれば考えるほど、頭は混乱していく。
「秋虎。僕に集中して」
「ちょっ、わかっ」
いつのまにか若は、俺をベットの上に押し倒して馬乗りになり。俺の身動きが取れないよう両腕の手首を手で押さえつけたまま、さらに深いキスを繰り返した。
「ぅっ、んっ」
何度も角度を変えて、俺の口内を味わうように舌を絡めてくるキスは、とろとろに溶けてしまいそうな気分になってくる。
気持ち良い。癖になってしまいそうだ。
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