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第15話
「冷たくない?」
「大丈夫、ありがとう」
ありがとう、とは言ったものの、豊の声の硬さに響は眉根を寄せた。
(塚本くん、イラついてるな)
描きたいものが思うように描けないイライラは、響も解るつもりだ。
何度自分でケロタンを傘に描こうとして、失敗したことか。
塚本くんは、いつケロタンを描いてくれるんだろう。
多分、納得のいく作品が出来上がってからの事になるだろうな、などと響は考えていた。
そんなとりとめもない思考で脳を遊ばせていたものだから、突然の大声に仰天した。
「ああ、ダメだ! ダメだダメだダメだ!」
「塚本くん!?」
いきなりスケッチブックを床に叩きつけ、豊は髪をかきむしった。
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