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第一章・3
拓斗の手からグラスを奪い、秋也は激しい音を立ててテーブルに叩き置いた。
グラスから零れたワインが赤い染みを作り、玲がそれをゆっくりとタオルで拭きとる。
赤く染まったタオルを拓斗の頭にぽいと被せると、玲は秋也にすまなさそうな顔を見せた。
「許して。酔っぱらってんだから」
「何言ってンだよ。俺は秋也君の事を、とってもとっても心配してやってるんじゃねえか」
どうだか、と声をあげた玲だったが、拓斗はそんな彼の頬を両手ではさみ、ぐりぐりとこねあげた。
「お前だって心配してたじゃねえか。何たって相手はあの植村だから、ってな」
どういう事だ、と秋也は玲に目で問うた。
拓斗は仕方ないとして、玲までどうしてそんな事を言うのか。
そんな秋也に芝居がかった神妙な顔を向け、拓斗は腕組みをして唸った。
「植村はよぉ、男関係が派手だろ? そんな女が、お前の手に負えるのかって事よ。下手すりゃ遊ばれた挙句あっという間に捨てられて、何やらかんやらふれ回られるんじゃねえのか? 女は残酷だからな~」
「植村はそんな女じゃない! ……と思う。たぶん」
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