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第一章・27
「つまり、その、何だ。植村相手では、やる気が起きなかったというか何というか」
「お前、あんだけイイ女目の前にぶら下げておいて、そんな事言うわけ?」
仕方ないだろう、と秋也はグラスをそっとテーブルに置いた。
置いてから。
玲をじっと見つめて抱き寄せ、その髪に顔をうずめた。
胸いっぱいにその香りを吸い込む。
なんていい匂いだ。
「ちょっと、秋也!」
慌てふためき秋也を引きはがそうと必死の玲を笑いながら、拓斗は立ち上がった。
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