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第二章・11

「来い」  腕を掴まれ、強い力で引っ張られる。  ほとんど無理矢理部屋の奥へ連れて行かれて、開いた扉の向こうは寝室。  玲は、ベッドの上に乱暴に押し倒された。  舞い上がった空気の中に、かすかに漂ったのは……拓斗の匂い。  は、と玲は我に返った。  拓斗の不在に、拓斗の寝室で、そのベッドで秋也と情事にふけるなんて最低だ、と。  拓斗と秋也、二人に不誠実な、自分勝手だった己を強く悔いた。 「や、やっぱりダメ! 秋也、離して!」  だが秋也は、暴れる玲の手首を痕が残るくらい強くつかんでベッドに縫い付け、再び唇を重ねてその口をふさぎ黙らせた。 「あッ、ンんッ! 」  すでに半分以上はだけられている胸元に、秋也の手が差し込まれてくる。  やがて業を煮やしたように、その左右を引き裂く勢いで大きく開いた。  弾け飛んだボタンが床の上に落ちる音を聞き、玲は心底震えた。  その秋也の熱情に。  それに酔いかけている自分の劣情に。  いけない、との気持ちとはうらはらに、体がどんどん熱く昂ぶっていく。

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