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第三章・2

 まずは拓斗。  いろいろと趣向を凝らすのは主に彼なので、玲はマンションの彼の部屋へと足を運んでみた。 「悪ぃ。今から出かけるとこなんだ」  やけにめかしこんだその姿。  きっと女性に会いに行くに違いない。 「何か、忘れてない?」 「ん?」  玲の言葉にひとしきり考えた後、拓斗は手をぽんと打ってうなずいた。  部屋の奥へ引っ込んで、出てきたその手に持っていたのはリボンのかかった小さな包み。  僕へのプレゼントかな!? と胸を弾ませたのは一瞬で、その包みは拓斗のポケットの中へ消えて行った。 「忘れるところだったぜ。ありがとな♪」  後は軽やかに部屋を出て行ってしまった。

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