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第三章・5

「ねえ、秋也」 「ああ」 「秋也には、誰か好きな人とか、いる?」  顔に血が上り、心臓がばくばくいっている。  ああ、どうか秋也が、そんな人などいないと言ってくれますように!   しかし、現実は非情だった。  秋也はやはり新聞から眼を離さなかった。  そして、その返事は。 「ああ」 「!」  ふらふらと、秋也の部屋を立ち去った。  自分を呼ぶ声が背中に聞こえたが、振り向きもせず自分の部屋へ帰った。  そして、泣いた。  しくしくと涙をこぼし、ひとしきりさっぱりしてしまうと猛然と外出の準備を始めた。  拓斗も秋也も、もう僕のことなんか愛していないと言うのなら!  それならば、僕だって新しい恋人をつくってやる!   そして、ラブラブな姿を見せ付けて、うんと後悔させてやる!  思いきりおしゃれをして、玲は街へ繰り出して行った。

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