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第三章・19
「でも、秋也は誰か好きな人がいるって言った」
「あれは、その。つまり、好きな人というのは、何だ」
お前のことだ、といって赤い顔を背ける秋也。
拓斗も、昨日会った女は馴染みの店のマダムで、もう70歳のおばあちゃんだと打ち明けた。
ますますばつの悪くなってしまった玲。
二人には、何も悪いところなどなかったのだ。
それなのに、僕は見ず知らずの男に許してしまった。
別の種類の涙があふれてくる。
「。・゚・(ノД`)・゚・。ウエエェェン」
「だーかーらー、泣くな。何があった? ん?」
「怒らない?」
「怒らないから、言ってみ?」
ぼそぼそと、玲は怪しい男・ゼロに買われたことを打ち明けた。
二人とも、きっと怒るだろう。
誕生日なんて、もう祝ってくれないに違いない。
秋也が、黙って玲の隣に腰掛けた。
ぶたれるかもしれない、と玲はどきどきしながら身をすくめた。
だが、秋也はその長い腕を回して玲の細い体を抱きしめてきたのだ。
「忘れろ。事故にあったようなものだ」
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