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第四章・5

「何だよ。すっかりしおれちまってるじゃねえか。全部引っこ抜いちまえ 」 「だめ。もう少しがんばってもらって、種をとるんだから」 「よせよ、貧乏くせえ。種なんか、買ってくりゃあいいじゃねえか」 「損得で言ってるんじゃないから!」  口をとがらせ、むきになる玲。  かわいいったらありゃしない。 「種からまた育てるってか? ご苦労なこった。苗買ってきた方が手っ取り早いぜ。」 「手間暇かけるから、花が咲いた時うれしいんだよ!?」 「でもよ、もうすぐ祭事があるじゃん。どうせ新しい苗と植えかえられるぞ」 「嘘。聞いてない」 「ちょっと考えれば解かることだろ。ハレの祭りに、しおれた苗なんかふさわしくねえ。人間だって、よぼよぼ婆さんより若い女の子の方がウケがいいってもんだ」

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