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第四章・6

 ヤバい、と勘付いた時にはもう遅かった。  ぷうとふくれてかわいかった玲の顔は、みるみるしぼんでしまった。  どうやら、本当に傷つけてしまったらしいのだ。  あとはもう、何を言っても曇った声しか返ってこなくなったので、しかたなく彼のもとを離れた。  チッ、と拓斗は舌打ちした。 「全くあいつときたら、ガキの頃からすぐにああやってしょんぼりしやがって。何かあるなら怒って言い返せっての」  そう、機嫌が悪いのは玲のせいなのだ。  そして、彼を傷つけてしまった自分にも腹が立っていたし、そうなるように仕向けた秋也も腹立たしい。    三つ巴の不機嫌に、拓斗はばりばりと頭をかいた。

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