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第四章・12

 いつもより早めに夕食を済ませ、いつもより早めに入浴を済ませ、いつもより早めに床に就こうと玲は雑用を片付けた。  香を炊き、パジャマに着替えたところで、はたと気付いた。 「戸締りしなきゃ」  パジャマのままドアへ向かうと、どしんと大きな物音がした。  何事かとノブに手をかけると、扉は表側から突然大きく開け放たれ、玲は飛び上がった。  体半分、屋内にのそりと入り込んできたその男は。 「拓斗」  体中からぷんぷんとアルコールの匂いを発散させ、赤く血走った眼は不吉な色をたたえている。  ひるんだ玲は思わず一歩退がったが、それ以上退がることを拓斗は許さなかった。  腕をつかみ、ぐいとひきよせ無理やり唇を奪ってきた。 「んッ! うんんッ!」  まるで噛みつくような、荒々しいキス。    こんな事は初めてだ。  いや、その前に酔った勢いでということ自体おかしい。  明日は早いという玲の事情は、拓斗も知っているはずだ。  そのうえで夜這いに来るという無神経さも彼らしくない。

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