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第四章・15
拓斗といえば、昼間の態度は全く腹立たしい。
大体あいつは、いつも自分勝手なことばかりしているんだ。
拓斗のことを考え、思わず口がへの字になったことに気づき、秋也は慌てて顔を戻した。
今から、玲に会いに行くのだ。
不機嫌な顔などしていてはだめだ。
優しいと言われて、嫌な気はしない。それなら、うんと優しくしてあげよう。
そんな風に考えながらエレベーターを降り、玲の部屋の前までやってきた。
だが、ノブに伸ばした手が思わず固まった。
「ん、あぁっ。拓斗ぉッ……」
この声は。
玲のこの声は、まさしく情事の真っ只中のものだ。
しかも相手は、あの自分勝手な拓斗だと!?
秋也の頭は一瞬にして沸騰した。
なぜだ。俺には断っておきながら、どうして拓斗と一緒にいるんだ!?
「あぁ。あっ、あっ、あッ、あぁん!」
短い切れ切れの喘ぎと、規則的に肌をたたく音が聞こえる。
扉を挟んですぐ向こうで、今まさに二人は交わっているのだ。
ソファの上でもベッドでもない、冷たく硬い床の上でだ。
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