114 / 256

第四章・16

 秋也は奥歯を噛みしめ喉奥で唸り、拳を強く握りしめた。  ドアをぶち破って殴りこみたい。  あと一歩でぐっとこらえた。  おそらく、拓斗が無理やり抱きにかかったに違いない。  流されやすい玲は、それに応じてしまったのだ。  優しいと言われて得意になっていた自分が情けない。  とんだ優男もあったもんだ。  遠慮なんかしたおかげで、全くひどい馬鹿を見た。 「んあ、あッぁ、ああぁん!」  玲の甘い悲鳴から逃れるように、秋也は走ってエレベーターに飛び乗った。

ともだちにシェアしよう!