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第四章・16
秋也は奥歯を噛みしめ喉奥で唸り、拳を強く握りしめた。
ドアをぶち破って殴りこみたい。
あと一歩でぐっとこらえた。
おそらく、拓斗が無理やり抱きにかかったに違いない。
流されやすい玲は、それに応じてしまったのだ。
優しいと言われて得意になっていた自分が情けない。
とんだ優男もあったもんだ。
遠慮なんかしたおかげで、全くひどい馬鹿を見た。
「んあ、あッぁ、ああぁん!」
玲の甘い悲鳴から逃れるように、秋也は走ってエレベーターに飛び乗った。
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