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第四章・22
「祝詞で20分、聖歌で10分だろ。これでいいじゃん」
「移動時間、含めてないでしょう。聖歌隊は30人いるんだから、結構手間取るんじゃないかな?」
「あ、そうか」
あきれた、と髪をかき上げる玲の仕草に、秋也はどきりとした。
首筋に、赤いキスマークが生々しく残っているのだ。
「前回、主担当補佐だったでしょう。しっかりしてよ」
「前回って、3年前じゃん。覚えてないよ」
「進行表とか、残ってない?」
「俺、捨てた」
もう~、とお手上げのように両腕を上げる玲。
短い袖口から柔らかそうな脇がのぞき、たまらない。
がたん、と大きな音を立てて立ち上がった秋也に、堀と玲は驚いて目をやった。
「書庫にあるんじゃないか? 前回の進行表。たしか、年ごとに保管してあるはずだ」
さすが神原、冴えてる~、などという堀の言葉も、もう耳に入らない。
「探しに行くぞ、玲」
「え? うん」
探しに行くなら堀さんと僕で、という間もなく秋也はすでに部屋を出かかっている。
玲は急いで秋也の後を追った。
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