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第四章・30
「はぁッ。んん、んッ。ぅん、んんんッ」
「静かに。人が来る」
それでも、どうしようもなく体が、心が熱くなる。
耐えがたい悦楽に、玲は秋也の背中に腕をまわし、爪を立てた。
秋也の動きに合わせて、腰を波打たせる。
そんなことをすれば、もっと卑猥な水音が漏れるのに。
もっと喘ぎが高まってしまうのに。
「ッや。秋也、ぃや。もぅいやぁ……」
人の話し声が聞こえる。
足音が、紙を繰る音が近づく。
「んくッ、んっ、んッ、ぅんんっ」
甘い苦しみに身悶える玲の中に、勢いよく秋也が吐き出された。
眼の前に、まぶしい光が明滅する。
耳鳴りが聞こえる。
ひきつった体の力が抜け、ぐったりとなった玲の耳に、音が返ってきた。
遠ざかる声。
ドアの閉まる音。
そして、後には秋也の吐く荒い息の音だけが残った。
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