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第四章・31
すばやく玲の衣服を整え、秋也は立ち上がった。書棚に眼を走らせる。
「これだ」
前回の祭事のファイル。
それを手にすると、かすかな細いすすり泣きが聞こえてきた。
眼を落とすと、玲が放心したように座り込み秋也を見ていた。
涙に濡れた、瞳。
埃まみれになってしまった、柔らかな髪。
「ごめんなさい、秋也……」
そして、声を出す事を許されて初めて口にした言葉は、秋也への非難ではなく謝罪だった。
(昨夜のことを言っているのか)
ちくりと胸に刺さった刺を無視するために、ぶっきらぼうに、先に行くぞ、とだけ声をかけ、秋也は執務室へと戻った。
部屋では堀がお菓子をばりばり食べながら、呑気にお茶を飲んでいた。
「あれ。守岡は?」
「何か知らんが、先に戻るように言われた」
嘘をごまかすように堀にファイルを渡すと、秋也はデスクについた。
残してきた玲のことが気になったが、子どもではないのだから大丈夫だろうと仕事に没頭した。
さすがに遅いと心配し始めたその時、ドアが細く開かれた。
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