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第四章・33
拓斗は、やや後ろ反りになってのろりのろりと歩いていた。
そんな仕草を見せる時、彼が落ち込んでいる事は秋也なら昔から知っている事であるので、道を塞いで行く手を遮った。
秋也をちらりと見て、拓斗は暗い声を出した。
「俺は最低野郎だ」
今頃気づいたか、という返事を予想していた。
昨日から不仲であるし、皮肉の一つも返ってこよう。
だが、意外な言葉が秋也から返ってきた。
「奇遇だな。俺もなんだ」
秋也の返事に少しだけ表情を動かした拓斗は、ため息をついて傍らのベンチにしゃがみこんだ。
「玲に、酷いことをした」
「奇遇だな。俺もなんだ」
同じ言葉を繰り返し、秋也もまた拓斗の隣にしゃがみこんだ。
「昨夜、無理やり犯した」
拓斗はそう言うと、髪をぐしゃぐしゃとかきまわした。
「俺はさっき、無理やり犯した」
同じように髪をかきむしりながら、秋也は自分のやったことがあまりに悔やまれ、玲のことがあまりに心配なので、午前中で仕事を切り上げ今から医療所へ向かうところなのだと吐いた。
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